大判例

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名古屋高等裁判所金沢支部 昭和31年(う)377号 判決

被告人 谷村好子

按ずるに未成年者飲酒禁止法にいう「営業者」とは名義上の営業者をいうのではなく、事実上の営業者を指称するものと解するを相当とする。けだし未成年者飲酒禁止法は未成年者の健全なる育成を図るためその飲酒を取締るのが目的であつて、原判決がいうように同法にいう営業者を営業名義人に限定するときは無断で営業者を他人名義にした場合又は営業名義人が死亡者であつたり或は架空の者であつた等の場合は、たとえ事実上の営業者にしてその業態上酒類を販売又は供与する者が、満二十年に至らない者の飲用に供することを知つて酒類を販売又は供与したとしても営業名義がその者でない限り取締の対象を欠き未成年者に飲酒させないことを取締ることが不可能となり法の目的を達成することができないことになるからである。

本件につき谷村やいの司法警察員並に検察官に対する供述調書、谷村二郎の検察官に対する供述調書、被告人の原審公廷における供述、被告人の検察官に対する供述調書、富山県知事の飲食店営業許可書謄本、当審証人中村弘の供述、福光警察署長よりの営業許可に関する件についての回答書、富山県公安委員会よりの風俗営業の許可の有無に関する件についての回答書、富山県公衆衛生課長長谷祐作よりの処分事項の照会についてと題する書面を綜合検討すれば風俗営業取締法及び食品衛生法による営業許可名義人は従来よりいずれも谷村やいでありかつ同人がいずれも事実上の営業者であつたものであるが、同人は老齢のため昭和二十九年五月頃より営業の一切は被告人に譲り爾来風俗営業取締法及び公衆衛生法による営業は谷村やいの名義において事実上被告人が経営し来り公衆衛生法による営業は昭和三十一年一月一日以降は名実ともに被告人が営業者となつたことが認められる。

従つて被告人は昭和三十一年四月当時料亭業及び料理店「谷村屋」の経営者であり未成年者飲酒禁止法にいわゆる営業者といわなければならない。原判決が「未成年者飲酒禁止法第一条第三項の営業者というのは現実にみずからその営業の執行に従事しおる場合であろうと、あるいはその業務を挙げて他人に委ねている場合であるとを問わずその営業名義人である者を指称する。」と解し本件につき同法条を適用しなかつたことは法令の解釈適用を誤つたものというべく、また原判決が「被告人は夫二郎と共にその経営を包括的に右営業者である谷村やいから委ねられ同人に代つてその業務の執行に従事しておる立場にあるもの」と認定したことは事実を誤認したものというべきである。右誤りは判決に影響を及ぼすことが明らかであるから他の論旨につき判断するまでもなく原判決は破棄すべきである。

論旨は理由がある。

(裁判長判事 高城運七 判事 成智寿郎 判事 沢田哲夫)

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